2008年10月14日火曜日

野球道?

このブログでは、あたしがお勉強している野球の技術を取り上げ、今後の指導に役立てようと書いているのですが、ここにきてチームスポーツには技術以外の要素がはるかに大きな意味を持っていることに気づかされることばかり。

せっかく守備を始めたところだったのですが、今回はその辺の状況を書いてみようと思います。
どうも、この辺のチームのバックグラウンドを理解しておかないと練習方法なども理解し難いところがあるので・・・

少し書きましたが、うちチームは急激に強くなってきています。
なにしろ、今年3月に公式戦が始まって以来、負けはたったの1試合しかありません。どうやら、最近はうちのチーム打倒を目標にするチームが増えているという話も聞きます。
この夏から秋口にかけて、これまで雲の上の存在と思っていたような地元の強豪チームと当たるオーダーが多かったのですが、結果としてはことごとく撃破してしまいました。

いったいどんな猛練習をしてこんなチームになったと思います?

毎日の強制的な個人練習?
地獄のノック?
ピッチャー陣の徹底的な走りこみ?
徹底したバント戦術?

・・イエイエ、実はこの10ヶ月間、この子達はこと「技術」に関してはまったく進歩していないと言って過言ではない状態です。打撃、走塁、守備、どれを取っても今、彼らがやれていることで去年4部でできていなかったことはほとんどないと言っていいでしょう。
あ、唯一練習したのは2塁牽制のやり方を変えたことだ。

でもそれ以外、去年やれていなかったことで今年になってできるようになった技術もありません。だからいまだにダブルプレーなんてやれた試しがありません。
もちろん、学年が上がり体力がついたおかげで肩が強くなったり、足が速くなったりということは当然あります。でも、これはどこのチームも同じこと。
ということは、去年の段階でそこそこやれるようになっていたということも言えるかもしれません。しかし、去年は市の大会どころか市内を3つに分けた地域ブロックですら優勝することはできませんでした。
でも、彼らは突然、ものすごく強くなりました。
なぜなんでしょう?

それは実に「野球道」ともいうべきものです。

うわー、このブログでこんな言葉を使うとは思いもよらなかったなぁ。
ひらたく言うと「チームプレー」ということになりますが、最近このブログにたびたび登場するベテランコーチ・監督の信念で、

■チーム全員が同じ方向を見て一丸となる
■メンバーの誰かひとりでも欠けたらチームはひとつではなくなる
■父兄・スタッフを含めてチームがひとつになる

これができれば、チームは自然と強くなるというのです。そして、こどもがこの意識を本当に持てれば「技術は自然に向上する」

というのです。 エー?本当か?
もちろん、他のブログや高校野球の監督さんが書かれているものなどを読むと同じようなことを書かれてますよね。でも、今までは本などを読んでもその本当の意味が分かっていなかったですね。
・・で、たしかにチームは激変しました。

こども達への指導としてこの10ヶ月間言っていることは、
①挨拶をキチンとする。
②練習・試合で大きな声を出す。
③道具を大切にする。
④野球をやれることに感謝する。

一言でいうと「気持ちだよ、気持ち!!」ということになっちゃいます。

「こんなことは、べつに去年から言ってることじゃないか。」 と思ったもんですが、監督・ベテランコーチのやりかたを見るにつけ、あたしなんかがこどもに言っていたのとは同じことを言っていても、注意する局面や、なんと言うのか、「深さ」とか「レベル」が違うのがハッキリしてきました。

言い方は難しいですが例えば試合で怠慢プレーがあったり、集合・整列が遅い、ちょっとした移動の合間におしゃべりをして注意が散漫になる、などなど普段のちょっとした場面ごとに、いちいちこども達を集めてはしかり飛ばしながら、この4つが出来ないことを練習を中断してでも、試合中であっても、熱く繰り返し繰り返し語ります。逆にこれらがちゃんとやれたときは結果に関わらず、メチャクチャほめて、この4つの意味をまた熱く語るのです。
こども達も、この繰り返しを毎回毎回やっているうちに少しずつ変わってきています。

一言でいうとほかのことに気を取られずに野球に集中できるようになった・・・ということだと思います。

ベテランコーチが来てからそのやり方を3ヶ月くらいじっと見ていて、テニスという個人スポーツをやってきたあたしとしては、
「ヲイヲイ、こりゃ野球の指導じゃねぇよ。」「しんきクサイわぁー」「いまどき何言ってんのこの人たち?」

・・ってな感じ。もちろん、技術的な指導をしない訳ではないのですが、前にも書いたように「腰落とせ!」式の前時代的な指導。どうなるんだろう・・・と思っているうちに約6ヶ月がたったころ、チームは驚くような変貌を遂げてしまったのです。

しかも、面白いのはちょっと気が緩むと、「このチーム本当に優勝したの?」と言いたくなるようなメロメロのプレーをします。
つまり、しっかり技術が根付いたから勝ってるのではなく、気持ちの持ちようで普段以上のことができるようになるという感じで、「気持ち」を高め、集中できる状態をベテランコーチや監督は「上達した状態」と考えるようです。

もちろん、メンタルのプレーへの影響はテニスでも同じことですが、テニスなら立ち直らなければならないのは自分一人だけなのに比べて、野球の場合はフィールド上だけで9人、ベンチメンバーやスタッフをいれたら20人以上いる訳で、その影響の大きさは個人スポーツの比ではないようだということに薄々気づいてきました。

そう考えると普段から気持ちをまとめられないチームはいくら技術を磨いてもダメだということがこのところおぼろげながら、分かってきてしまいました。
監督などは「子供に技術なんか教えたらダメだ」とハッキリ言います。ヘタに技術を教えると覚えた子がテングになってチームの和が乱れるというのですな。

例えば、今16人いるこども達の中でも1年生のときからずっとやっている子もいれば、野球をやり始めてやっと1年くらいの子もいます。当然、技術の習熟度合いは違うわけですが、監督は習熟度合いでメニューを分けたりすることはしませんね。もし、それをやるとこども達の間にある、上手な子と下手な子というような意識・暗黙の了解的なものを表面化させてチーム内が荒れると言うのです。
そうかそれは、ありそうな気もする・・・

実は、以前おんぶにだっこだったエース君が春の選手権後にまたもやケガに見舞われ、2ヶ月間ほど試合に出られない状態が続いていたのですが、そんな状況でもチームは勝ち続けたのです。つまり、うまい子に依存せずにキッチリ勝ちをもぎ取れるようになってきたんですね。

とはいうものの、あたしとしてはやっぱり気持ちを高め、集中できるようになってきたからこそ、技術を加えるべきではないかと思う気持ちもあり・・・

難しい・・・でも、ゾクゾクするほど面白いもんですねぇ。

守備:キャッチボールのフットワーク

さてさて、いよいよキャッチボールについて書きます。あたしは、守備担当コーチということもありrenくんたちが3年生の4部のころはキャッチボールをかなり丁寧に練習させていました。

なにしろ、あたしがこども達を教える中で一番気をつけようと思うのが、肩や肘を壊すことがないようにさせたいということ。そのためには、無理のないフォームで無駄のない動作を教えたい、そこで4部のときはキャッチボールのフォームもやり方もすべてあたしが指導していて、このブログのピッチングカテゴリのエントリーはその時点の投球フォームに関する指導内容を書いたものです。

しかし、前回の「腰を低くの意味」でも書いたように、renくんたちが今年4年生の3部になってからベテランコーチが教えるようになったのですが、そのコーチや監督が教える方法はあたしが教えていた方法とはだいぶ違っていて、さらに自分がお勉強している中でもいくつかの方法があって・・・

「結局どれがいいのよ!?」

という状態が続いていました。それが、最近あるきっかけで、どうやら「こうなんじゃないか?」という結論めいたものが見えてきたので、やっとエントリーしようという訳です。

特に悩んでいたのは、キャッチボールのフットワークです。もともとあたしは、自分がお勉強する中で「キャッチボールは3歩あるく」を基本に教えてきました(あ、上体の動きがある程度できてからです)。

3歩あるくというのは・・・
①まずグラブ側の足を一歩出しながら捕球する。
②捕球したら、投球側の足を90度捻りながら(土踏まず側を相手に向けて)、グラブ側の足の前をクロスするように一歩踏み出す。
③②の足を軸にグラブ側の足を相手に向かって踏み出して投球する。
④②と③をすばやくサイドステップで行えばクイックスロー。

ということで、右投げなら、「左→右→左」と踏み出しながら捕球&投球する訳です。
これは、バイブルであるMFTや「少年野球ブログ」のmetooさんチームでも採用されていて、さらに元ロッテの水上選手がこども達に教えているビデオを見て採用を決めたのですが、とても動きが自然でしかも守備のフットワークの予備練習にもなるのです。

守備で、ゴロを捕球・送球する流れは・・・
①左足かかとをつき、つま先を上げた形で捕球。
②左つま先を降ろして左足をステップ
③②のステップをきっかけに右足をクロスステップまたは、サイドステップしながら投球。

・・・ですから、3歩あるくことがクセになっているとこの動きが違和感なくできるわけです。
ところが、別なバイブルである「科学する野球」では、「2歩」だと言います。上記3歩の①を省いた形です。当然ですが、このほうが捕球から送球まで時間が短くて済みます。特にキャッチャー牽制などには有効だし、きわどいダブルプレーなどでもぜんぜん違ってきますよね。

そしてそして、わがチームのベテランコーチと監督の指導はまた違っています・・・

■両足を肩幅に開いて膝を曲げ、両手でボールを引き込むようにガッチリ捕球する。
■投球動作は捕球動作とは連動しない。

うーん、これはどうなんだ?まるっきり捕球と投球を分離している。
それでも、キャッチボール練習では必ず最後に「近くで20球」と言って、クイックスローでのキャッチボールをさせます。でも、ふだんこども達はフットワークをまったく習っていないので、どうもぎこちない子がいます。4部の頃に3歩を仕込んだ子達はいいのですが、3部に途中から加わった未経験の子などはいまだにぎこちない動きのままです。

ところがです、ごく最近の練習で塁間のボール回しをしている時に、このベテランコーチが突然「フットワークができていない!」と言い出したのです。
曰く、「ボールを捕ってから足を動かしてたら送球に時間がかかるんだよ」
曰く、「ボールを捕球したら投球側の足を軸足にして動かさないで、グラブ側の足を目標に向かって踏み出して投げろ」
曰く、「そのためにはボールは斜(はす)になって捕るんだよ」

・・というのですが、こんな動作はこれまで教えたこともありません。突然こんなことを言われても、これまで「球は正面でガッチリ捕れ」としか教えられていないこども達はチンプンカンプン。まあ、この辺が伝統的な指導らしいところとも言えますが、こども達がかわいそう。

これまでさんざん「正面ガッチリ」ができたらフットワークを教えようと言ってきたのに、ガンとして受け入れなかったのだから困ったもんです。

じゃあなぜ、突然こんなことになったのかと言えば、前回のエントリーでこの子達が市内の市民大会で地元の超強豪チームを破ったことを書きましたが、その後ドンドン勝ち進み、なな・なんと
「優勝」 してしまったのです!!
そのご褒美として東京23区プラスアルファが参加する大会に参加できることになりました。
さらには、先月秋の市民大会が始まったのですが、これまたドンドン勝ち進んでまたまた決勝進出という状況。

とまあ、伝統的指導のスゴさを肌身で感じている今日このごろなのですが、・・で、最近強いチームとばかり当たることが増えてきて、これまでのプレーのレベルではいかんゾと、そういうことになってきた訳ですね。急に違うことを言われるこども達はかわいそうなんですが、ま、力が認められた結果と考えればうれしい悲鳴です。

ただ、このチーム状況を考えていたら、自分が悩んでいた「結局どれがいいのよ!?」・・は段階的にマスターすればいいということに気づいたのです。
どういうことかと言うと・・・

①初心者の子供は「正面ガッチリ」で正確に捕ることを覚える。
②①ができた子は、「3歩あるく」フットワークで自然な動きと守備動作の流れを覚える。
③②ができていて、「より早い送球」が必要になったら、②の応用として「2歩」を教える。

ということです。さらにプロのボール回しなどを見ているとさらにノーステップまで進化できるということが分かりますね。もちろん、これは2歩の極小ステップということですが、「正面ガッチリ」の形で捕球する瞬間に膝と足首を緩めて一瞬足が浮き上がるような感じで捕球し、着地と同時に股関節をキュッと捻るだけで投げてます。この辺の動きは最近はやりの「古武道」にも通じるようで興味深いです。

まあ、きっかけはなんであれ、やっとキャッチボールのフットワークを教えることができそうなのですが、ここでまたぶつかるのが伝統指導の壁ですな。
・・・と言っても実は、その伝統指導の考え方はなかなか深遠なものでもあり、チームスポーツを指導・運営するに当たって非常に重要なことがらを含んでいるようで考えさせられます。