2007年10月24日水曜日

理論と実践 -あらたなバイブルの登場!-

 
ピッチングに関しては、バッティング以上に理論の部分で悩んでしまいました。

日本人投手の投法と大リーガーの投法はどのように違うんだろうか?本当に「科学する野球」が指摘することが問題なのだろうか?などなど考えているうちにバッティングの時に参考にしていた「メジャーの打法」(http://www.geocities.jp/tokyomarlin/part1.html)の中に投球の分析もあったことを思い出し、改めて見てみたところ、あるわあるわ・・・

この中では、Feltner氏、Jobe氏、風井氏他の論文を元に筋電図データから主にピッチング時の腕の振りに関わる筋肉の使われ方について日本人投手と大リーガー投手の違いを論じています。

・・・で、読んではみたのですが・・・さっぱりわかりませーーーーん。
ただ結論的に、上記3氏の研究から現在日本で主流となっている投法は2つあるようでそのうちのひとつがアメリカの投法に類似しているということのようです。
また、このサイトの主催者はこういった研究を踏まえ、これまでよくないとされてきた「アーム式投法」を分析し、改めて積極的な意味のある「別な投法として」再定義するべきであるという考えをもっており、その定義からすると松坂大輔投手やあのペドロ・マルチネスもアーム式に分類されるとしています。

「えーーー?松坂がアーム投げ??」

なんて思いがちですが、間違ってはいけないのはこの主催者は「アーム式投法」を「再定義」しているということですね。
詳細を知りたい方は、ここを見てみてくださいね。


ところで、今回のタイトルは「理論と実践」ですな。
そう、ピッチングに関して上のような理論を追いかけていてなんか頭がウニになってしまっている状態を知っていただこうと上記のサイトの概要をあえて書いてみました。

でも、以前に書いたように自分自身はややこしい理論は好きですが、実践指導はできる限りシンプルにしたいと考えています。
・・そんなことからして、

「おいおい、こんな難しい研究を追っかけてどう指導するつもりなの?」

と、自分自身にツッコミをいれていました。

ところが!そんなウニに忽然と新たなバイブルが登場したのです!!

「僕の野球塾」(講談社刊 工藤公康著)

今までなんとなく見逃してしまっていたのですが、ある日本屋でなんやかんやと立ち読み(やっぱり・・)してたらフと目についてなにげなく読んでみたのです。
その瞬間!!

「買わねば!!!!」

とビックリマークが4つも並んでしまい、同時にあたしのバイブルに自動登録されたのでした。

なにしろこの本、あの工藤投手自身が定例で開催するジュニア向けの野球教室で指導していることをまとめているのですが、とにかく理屈がシンプル!そしてその理屈を理論として展開するのではなく、実際の動作に落とし込んでいて、要はその動作(工藤投手自身がモデルになっている連続写真)をマネること、繰り返しその動作・ドリルを練習することで体で習得できるようになっているのです!

すばらしいーーーー!!!

そう!自分自身が理論に振り回されていることがよーーーく分かりました。
一貫した指導のために理論は重要ですが、あたしはバッティングと違って重要なポイントを動作に落とし込めていなかったのです。

特にウロコが落ちたのは、足上げからトップの形までの動きを、

「足を上げ、足を下げたら手が上がる」

と説明していたことです。

ピッチングを十分に理解できていないあたしにとって、この動作そのものが普通に目にする動きでありながらトップを形成する際のタイミングや、間の取り方や、手足の連携にとって重要な動作であることを初めて知り、さらにそのことを端的にたった一言で見事に言いあらわしていることに驚愕したのです。

「やっぱ指導者はこうじゃなくちゃネーーーー。」

テニスの頃を思い出しながら一気に読みきってしまいました。
なにしろ、技術論の部分がとてもコンパクトなのもこの本の特徴でしょうね。
技術論以外は、野球をやることに対する考え方や姿勢といったことが主なテーマになっていて、まさにこの部分が指導の上で必須であり、逆にここが分かっていないといくら技術をコーチが教えてもダメだということを端的に示す稀有な指導書ですよね。

誰もが重要であると考えながら、技術書に添え物のように書くことが多かったテーマだと思いますが、この部分を大々的に書き、その中に技術論を交えているところに自らが技術を極限まで追求している現役投手である工藤投手の真骨頂が現れていると感じました。

この本を読んで今まで以上に工藤投手を応援したくなりました。
このブログを書いているほんの2日前に工藤投手は手術をした肘のリハビリのためアメリカに渡りました。

ばっちりリハビリして、来年も今年以上に大活躍して下さいネ!!!

 

2007年10月11日木曜日

後ろ足の使い方

今回は、自分でその理論を取り入れるわけではないのだけれども気になっていることを取り上げます。

このブログでも何度も取り上げている手塚さんのダブルスピン理論の「エッジング」についてです。
まず、あたしがダブルスピン理論に出会ったのは、2006年の12月ごろ。
6月からチームにコーチとして参加して、少しづつお勉強しながら自分なりの考え方を模索している最中でした。
きっかけはバッティングのお勉強にいろいろな本を探していたときに「うねり打法」や「シンクロ打法」などの書籍を立ち読みしては(やっぱ立ち読みかよ!)個性的な理論を展開しているなぁ・・と思っていたところ、文庫版の「プロ野球 バッティング&ピッチング解体振書」(PHP文庫)を見つけて買ったのです。

野球の技術に関して、体の構造や筋肉の働きを踏まえて体系的にまとめられたものは手塚さんの本が初めてだったので、読んでたらなんかワクワクしてきましたね。自分も魔球が投げられるようになりそうな気がしてね・・・

・・で、早速ためしてみました。
自分的にはピッチングについて目からウロコが何枚も落ちちゃいました。もちろん、ダブルスピン投法をマスターできた訳でも「ジャイロボール」を投げられるようになったわけでもありませんが、この理論をマネて投げてみると、それまでわけも分からずテキトーなフォームで投げていたのが

「そうそう、テレビのピッチャーってこんな感じジャン!」

なんて思える程変わってきて、腕の振りが一定の軌道になってきたのが分かりました。おかげでコントロールが抜群に良くなったし、その昔テニスエルボーで傷めた肘が痛くならずに投げられるようになったのです。(それまではチョット投げただけでも痛かったんです)
そして、ピッチングのエッセンスの回で書いたゼロスローを体験できたのもこの本のおかげです。

腕の振り以外にも、足上げで「Yの字バランス」にすること、併進運動の際にバッテリーラインからわずかに1塁側にある椅子に腰掛けるように腰を落とすこと、テイクバックを肘から上げること、そしてなにより右腕の内旋によるスローイングの方法が明確に分かったことが大きな収穫でしたね。

そんな体験からほんの3ヶ月前までは、投球はダブルスピンを元に教えようと考えていました(「科学する野球」を読む前までってことですね)。

ただ!!どうしても気になる動作があったのです。それは・・

『エッジング』です。

エッジングは、バッティングでもピッチングでも軸足を通して地面からのパワーをうねり上げるときに重要な役割を果たすらしいってのは分かる感じがするんだけれども、いまいちピンとこない・・・どうやら、後ろ足の内側くるぶしが地面につくぐらい粘ってから投げたほうがいいらしい。でも大リーガーは狭めのステップで突っ立ったまんま投げる感じですよね。

前回の「フィニッシュ」でも取り上げましたが、ピッチャーのフォームに関して日本人と大リーガーの違いのとても大きな部分がこの足の使い方だと思うんですね。
手塚さん自身もこの体を低く使う動きとそれにともなう「くるぶしが地面につかんばかり」の粘るエッジングは、相撲に端を発する日本人の下半身の使い方が受け継がれた「伝統工芸的」な独特の動作であるといっています。

一方「科学する野球」では、後ろ足の内側がいつまでも地面を押さえているのは軸足の内部応力から発生するべき「捻り」が使えないとしてNGなんですなぁ。
手塚さんの理論は、細かいところまで考えられていると思うのですが、このエッジングについては若干不明なところがあると思ってます。それは、ドミニカの投手の多くもこのエッジングを使っているとのことなのですが、日本人の使い方とは違うらしいのですね。

「ペドロ・マルチネスのように高い重心で「エッジ」を効かせれば、回転には有利でも下半身はネバリづらくなるだろう。
同じ「エッジングの効かせ」方でも、お国柄が出ていてなかなかおもしろい。」
<原典:PHP文庫刊「プロ野球 バッティング&ピッチング解体振書」>

もっと詳しく比較論が知りたいところですが「おもしろい」で流されてしまいました。
高い重心でのエッジングは本当に回転に有利なの?回転を効かせた投げ方とダブルスピン投法はどう違うの?ドミニカのエッジングってどういう動作なの?いろいろ疑問が湧きます。

この違いが分かれば「科学する野球」でいう大リーガーの投法との違いを理解するヒントになるのではと思ったのに。

・・・・と、ここまで書いてきたときになんと あの! あたしの最近のバイブルサイト「野球サイトPA」主催者10さんからコメントを頂きました。

「えっ!? あのサイトの主催者から?」

とビックリしつつ、コメントをやり取りしています。その中で10さんは日本の投法が金田・権藤・稲尾時代にはステップはそれほど広くなかったのに、昭和中盤~後期に「ステップはとにかく広く」というのが常識になってしまい、そして最近は徐々にまたステップ幅が狭い選手が増えつつあるという流れと、最近大リーガー投手の中に日本っぽい足の引きずりをする選手が見られることを挙げて、

「両方のいいところが合わさっていきそうだ、と期待しています。」

という意見を頂きました。

なるほど、そういうこともあるのかもしれませんね。
あたしもコメントに書いたのですが、ヤンキースのリベラ投手のフォームなどは、結構日本人っぽい感じしますよね。


・・・と、いいつつもやっぱりドミニカエッジングというものがあるなら、どんなメカニズムなのか知りたいなぁ~。
 

2007年10月10日水曜日

フィニッシュ

だいぶ、エントリーに間があいてしまいました・・

前回、ピッチングの流れを一通り書いたところで、次に何を書くかまたまた悩んでしまいました。
但し、やっぱり前回の最後でシリング投手の写真で悩んでいると書いているので、とっかかりはここからにしよう!

さて、どうしてこの写真で悩んでいるのか分かりますか?
そう! 右足が地面から離れていることなんですよ。






あたしのバイブルのひとつ「科学する野球」では、日本人プレイヤーと大リーガーの動作を分析し、より理に叶っているのはどういう動作かということを解説しています。
この中で、ピッチャーのフィニッシュは・・・
大きい方が大リーガーに多いフィニッシュ、小さい方が日本人に多いフィニッシュですね。









<原典:筑摩書房刊「科学する野球レッスン」>
大リーガーは始め後足を軸足として体重を預けさらに、立ち気味の狭いステップで前足に体重を乗り移しながら今度は前足を「回転軸」として固定させて使うことで体の中で最も重い大臀筋を含めた体重を全て前足に移せる・・としています。

一方日本人プレイヤーは、足上げのあとに唯一の軸足と呼ぶ後足を折り曲げ、低い姿勢でヒップファーストの長く低い併進運動でこれまた低くて広いステップを行いますが、この広いステップにより大臀筋が両足の真ん中に落ちてしまって、その重さがリリース時に前足に乗り切らないため、体重移動が不十分であると指摘しています。

同一物体において体重を移動するときに、重心が低い場合と高い場合を比較すると高い方が体重移動しやすいのは物理的に明らかですよね。
「ピッチングのエッセンス」でも紹介した最近のバイブルサイト「野球サイトPA」でも、体重移動の動作(併進運動)と上体の動きを支えるには日本人の細い足・弱い上半身では、メジャーリーガのような重心の高いフォームから前足を突き刺すように踏み出す際の衝撃に耐え続けることができないとした上で・・

『「ただ、メジャーリーガーであっても日本人であっても、「前足を固定し、股関節を軸にして体を回す」という「理想的な原理」は変わらないはずです。」』
<参考:「野球サイトPA」(1)前足ステップのやり方 4:ステップ幅「7歩が理想なのか?」
http://pitchinganalyzer.web.fc2.com/3-1.html

・・・と言ってます。
つまり、「科学する野球」でいう大リーガーの動作はやはり「理想的な原理」に基づいているということですね。

これらの理論を受けてあたしは、一応ヒップファースト併進運動+前膝角度100度 を現在の指導方法としたと書きました。
なぜなら、問題は日本人の肉体的な弱さにあるという指摘があるので、これは一朝一夕に解決できない問題だし、こども達にとって危険な動作はさせたくないという理由からです。

でも、気になるのは、日本人の投球方法では体で最も重い「大臀筋」の重さが乗らないという指摘です。
これが本当なら、かなりもったいないという気がしますよね。
ただでも体重が軽い日本人が、最も重い筋肉の重さを使えないということですもんね。
これが本当なのかどうか検証したデータはないのかなぁ・・・

・・で、冒頭のシリング投手のフォームを見るとリリース直後に右足が完全に浮いていて、つまりこれは体重が完全に左足に移っていると見えるのがとっても気になる訳です。

・・という訳で今回は何を悩んでいるのか?を明らかにして終わりです。